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久山秀子・一条栄子覚え書き

「久山秀子・一条栄子覚え書き――日本最初の「女性」探偵作家――」
細川涼一 『京都橘女子大学研究紀要』第30号(2004年1月31日発行)

 探偵小説好きの歴史学者、細川涼一先生の最新論考です。今回は久山秀子と一条栄子(小流智尼)を取り上げて、「女性」探偵小説作家再評価の為の下準備という感じ。確かに、論創ミステリ叢書のラインナップにも松本恵子や久山秀子が挙がっている事でもありますし、ぼちぼち本格的な論考が出て来てもおかしくないテーマです。

 さて、久山秀子といえばジェンダー詐称の「女性」探偵小説作家だという事は皆さん周知の事かと思いますが、『日本ミステリー事典』(新潮社)に「本名芳村升。片山襄とも。」というような紹介をされている事からもわかる通り、その正体と経歴についてはかなり曖昧です。これは中島河太郎先生が纏めた久山の経歴が、妙に根拠が曖昧なまま何度も修正されている為だったりしますが、今までそうした記述の曖昧さを追求しなかった読者にもかなり問題があるって事です。
 細川先生はもう一度改めて作者・久山秀子の経歴を当時の資料に当たって確認すると同時に(実はそれでもまだ謎が多い)、「隼」シリーズの語り手、つまり女掏摸・隼お秀こと久山秀子の経歴を作品中から丹念に拾い出してまとめ上げてゆきます。謎の多い作家「久山秀子」、謎の多い語り手「久山秀子」、と二重の意味で謎が多かった「久山秀子」像がこれでちょっとすっきりしました。
 一条栄子については数年前『創元推理』誌が行った特集を下敷きにして、決して多くはないその著作の分析から見えてくる、同時代における作家・一条栄子の立ち位置、という具合に論じています。

 繰り返しますがまだまだ論考自体がそれほど多くないテーマ、参考文献として御一読をお勧めしておきます。

 それから、細川先生からは京都橘女子大学・女性歴史文化研究所発行の機関誌『クロノス[時の鳥] vol.18』(2003年3月)も併せてお送り頂きました。エッセイ「京(みやこ)のおんなたち」で角田喜久雄『歪んだ顔』に登場する京都の風景と、探偵役の女性記者・美々について書いておられます。

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