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全力投球 ―武平半生記―(第二話)

(これまでのあらすじ)

明治30年12月31日 岡戸武平誕生。
幼児時代(3~4歳?) 近所の女児の性器を初めて見る。
小学校入学前後(5~6歳?) 初めて春画を見る。
同時期 叔母の寝姿に性的好奇心を覚える。
明治45年頃(14歳) 高等科二年生。友人に手淫のレクチャーを受ける。
同年4月 小学教員として奉職。尋常4年生を受け持つ。
大正3年頃(16歳) 受け持ちの女生徒の姉(かつての同窓生)にラブレターを書くが失敗。
大正7年頃(20歳) 新聞記者を志し、瑞穂尋常高等小学校へ転任。友人と同人誌「紅帽」を出す。
同時期 下宿の奥さんと関係を持つ。童貞喪失。
同時期 奥さんから一方的に絶交を宣言され、ショックから遊廓に通い始める。後日、奥さんの妊娠発覚。当時その意味するところがわからず関心なし。
同時期 馴染みの芸者・あぐり、肋膜を患い転地療養。知多郡西ノ口まで彼女に会いに通う。
同時期 あぐり、廓へ復帰。登楼していて職務をさぼり、注意されたのを機に辞職。名古屋新聞に勤める。
同年暮れ 東京・近衛歩兵第三連隊へ入営。第一期検閲で結核の為現役免除され帰郷。
大正8年頃(21歳) 名古屋新聞に復社。同人誌「創作」同人に加わる。
同時期 瑞穂尋常高等小学校時代の女教師から移転通知を受け、肉体目当てに彼女の下宿に通う。
大正9年(22歳) 名古屋新聞東京支局へ転勤。
同時期 懸賞に応募してきた名古屋出身の女性・矢野芳子と鎌倉デート。
同年秋 大阪時事新報社へ移る。「地方部」勤務の平井太郎と出会う。
同時期 受付係・平林峯子にプロポーズ。叔父の承諾を得る。
同年大晦日 血痰を吐く。
大正10年(23歳) 大阪・蛍ヶ池療養所のM所長の診察を受ける。実験段階の新薬投与。
同年秋 母死去。葬儀の肉体的負担がたたり少量の喀血を見る。名古屋に戻り静養。
大正11年暮れ(24歳) 名古屋・八事療養所に入所。峯子から婚約解消の手紙届く。翌朝多量の喀血。
大正12年梅雨期(25歳) 再度多量の喀血。
同年8月 容態が落ち着く。
同年9月1日 関東大震災をベッドの上で経験。
大正13年秋(26歳) 妙見山・日赤八事療養所に転院。病状安定。懸賞小説で小遣い稼ぎ。
大正14年正月(27歳) 看護婦T子に思いを伝えるべく「恋」と書いた凧を上げる。
同年暮れ 退所を控えて就職活動。知人から小酒井不木を紹介される。

 あらすじというか、年譜ぽくまとめてみました。
 何とか体調も持ち直しカワイイ恋人も出来た岡戸武平、新生活に向けて就職活動を始め、無事、小酒井不木の執筆助手という仕事に就く事が出来ました。

小酒井不木先生は初対面であったに拘らず百年旧知のごとく私を遇し、是非私のお手伝いをしてもらいたい、報酬は月三十円。三日目ぐらいに此処へ来て次に書くべきことの打合せをしたい。その書くべき原稿は「闘病術」と題する結核患者への勇気付けと、その療養のあり方、精神の寄りどころ、その病苦と闘いながら意外に長命したばかりか、健康人も及ばぬ功績を残した人の伝記などを織りまぜた結核患者を勇気付ける内容のものであるとのことであった。
「それならば療養所で読みました正岡子規の病苦との闘いや、徳永規矩の「逆境の恩寵」にいい話が載っていますから、それを紹介します」
といったら
「君自身の療養所に於ける療養の在り方なども遠慮なく突ッ込んで書いてもらいたいものだね。その心の持ち方如何が病気を好転させるのか否かにかかっているんだと思うのだ。その辺の病気に処する態度を確立することが、この病気を征服できる、できんに大いに関係がある。僕もロンドンやパリで何度も喀血し、時にもう駄目かとあきらめたこともあったが、そう易々と死んでたまるものかと、自分に対して宣戦の布告をした。それが結果に於いて一番の妙薬となった―その辺の病気に対する態度を根底にして書いて貰えばよい。本は春陽堂から出版されることになっているし、著者名はむろん二人にする」
 私は先生からその説明を聞いている間にも次第に昂奮し、仕事を得た幸運と相待って、神はまだ私を見捨てない、やるぞと胸のふくらむ感があった。

 そして大正15年、春陽堂から『闘病術』が小酒井不木単独名義で出版され、信じられない大ベストセラー(132刷を確認済み)となったのは皆さんご存知の通りです。岡戸武平の裏の顔――代作人生の出発点、と言ってよいかもしれません。

(第三話へ続く)
(記 2003/12/18)

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