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「奈落の井戸」更新情報:陪審制度から裁判員制度へ

 5月21日から裁判員制度がスタート致します。国を挙げての啓蒙活動に励んでいると思われる今日この頃ですが、80年くらい前にはこんなこともあったぜ、という資料を公開してみます。

陪審劇「パレツト・ナイフ」(『探偵趣味』大正15年10月号)

 1923(大正12)年4月18日に公布され、1928(昭和3)年10月1日より施行されることになった陪審法。その啓蒙活動の一環として、「探偵趣味の会」が企画した陪審劇のレポートです。舞台脚本を書いたのは小酒井不木で、舞台演出を手がけたのは喜多村緑郎。

 ……肝腎の陪審の部分が端折られ過ぎてて、どのように演じられたのかさっぱりわからないんですが、とにかく読んで頂いてわかる通り、筋立てからして非常にくだらない。時代が古いからというだけじゃねえなあ。

 喜多村緑郎の日記にこのあたりの事情が書かれているのでちょっとご紹介。

 名古屋から、小酒井氏脚本、「パレツトナイフ」の印刷したものが届く。読んでみると、実に、舞台は新派のそれである。甚だ拙なるものといへる。
 言葉の不用意といつたらない。構想も、いつもの小酒井(言葉はいつもうまくないが)氏の書くべき医学上の問題をとりあつかつたものでないのが第一に飽きたりない。
 出来るだけよく理解して猛烈に訂正を加へた。
(『喜多村緑郎日記』・大正十五年八月廿日)

 昨日は小酒井氏に会つて、脚本について突込んで質問をすると、結局、プランを立てて潮山と云ふ弟子のやうな男に書かせたと云ふ訳であつた。その為に、山田弁護士に今度の本によつて、鼎の軽重を問はないでくれと伝へて貰ひたいと云つたわけだ。
(同上・大正十五年八月廿三日)

 この「潮山と云ふ弟子のやうな男」というのは大衆文学作家・潮山長三のこと。要するにこいつの書いた脚本がどうにもならん代物だったということですな。当然芝居の出来についても低評価。

 舞台の出来は到底望むにいたらない事は、予想通りだ。が、どうにかまとまりはついた。一同からは、「お陰様でまとまりまして」などいはれたが、脚本よりはまとまつたわけである。
(同上・大正十五年八月廿六日)

 他にも色々興行面での交渉のいいかげんさに難渋したり、現地の役者のレベルの低さにうんざりしたり、この陪審劇一つとっても、一座を動かす役者って大変だなあと思わせることが書かれていて、小酒井不木がそれに多少なりとも加担してしまっているだけに、ファンとしては何とも言い難い気持ちになるのでした。

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